PLAYER #05 ——
杉浦 和美
Kazumi Sugiura

HOLE 01
底なしのスランプ
クラブを置こうか、本気でそう思った日。
杉浦:今回、取材のお話をいただいたとき、偏検テーマを見て「すごくタイムリーだな」って思ったんですよ。
葉子:タイムリー、ですか?
杉浦:実は私、6年ほど前から深刻な不調に陥っていて。ラウンドしてもドライバーは飛ばない、アイアンも当たらない。80台後半どころか90を打つことすらあったんです。
葉子:えっ、先生が90?
杉浦:そう。忙しさにかまけて自分の練習に時間をかけず、レッスンの合間に20球ほど軽く打つ程度。そんな状態を放置していたら、本当に打てなくなってしまって。
若い頃はソフトボールで培った抜群の運動神経を武器に、70台を連発して競技でも活躍してきた杉浦先生。
しかし年齢を重ねるにつれ、かつて当たり前にできた動きが少しずつ崩れていったという。
杉浦:ホームコースの富士見ヶ丘カントリー倶楽部で、いつも余裕で超えていた『年金坂』すら超えられない。「えっ、こんなに飛ばないの?」って。10ヤード、20ヤードのレベルじゃない落ち込み方で、本気で焦りました。これは、やばいなと。
葉子:そこから、どうされたんですか?
杉浦:まずは体を作り直そうと、元旦から毎朝近所の山に登り始めました。山頂では、ご年配の方を中心に20人ほどが毎朝ラジオ体操をしていて、私もその輪に加わるように。山を下りたら、そのまま練習場へ向かう生活をスタートさせたんです。
杉浦:でも、練習しても練習しても、まったく当たらない。トップとダフリの連続で球は上がらず、距離も出ないんです。
葉子:毎日しっかり練習しているのに、ですか?
杉浦:そう。「冬だからかな」って自分に言い聞かせて、ハーフスイングから毎日コツコツやり直しました。1カ月、2カ月、3カ月と続けたんですが……。
葉子:それでも、ダメだった?
杉浦:まったく。改善しないどころか、1年、2年、3年経つうちにどんどん下手になっていって。
「練習は裏切らない」なんて、誰が言った?
しかも先生はプロ。自分が打てない辛さだけでなく、生徒の前で振らなければならない現実が容赦なくのしかかる。
杉浦:ラウンドレッスンで1打目からチョロを出してしまって。「先生でもそんなことあるんですね」なんて言われたり。
葉子:ううぅ……想像しただけで胃が痛くなります……。
杉浦:昔は70台で優勝していた仲間内のコンペでも、チョロを重ねて95や96。周りも気を遣って声をかけられない空気になってしまって。
かつて堂々とクラブを振っていたプロが、人前で打つことすら怖くなっていく。
程度の差こそあれ、ゴルファーなら似たような経験があるはず。昨日までできていたことが、今日はできない。ゴルフって、本当に残酷なスポーツだ。
杉浦:「またチョロしたらどうしよう」って見られるのが恐怖で、負のループから抜け出せませんでしたね。
そう語りながら、先生がスマホを取り出した。
杉浦:これ、見てみて。

見せられたのは、スランプ真っただ中のスイング動画。映像の中で放たれたのは、見事なまでのチョロだった。
杉浦:打ち方自体が分からなくなって、「年齢のせいなのかな」って本気で思いました。
葉子:そこまで追い詰められると、クラブを振るのがトラウマになりそうです。
杉浦:ですよね。主人にも思わず漏らしたんです。「もう私、無理かもしれない」って。
知っていたはずの自分のゴルフが失われ、練習しても戻らない。積み重ねてきたプロとしての自信も削られていく。
そんな暗闇から抜け出すために杉浦先生が踏み出した一歩——それは「自分のゴルフを、もう一度人に診てもらう」ことだった。
(つづく)
HOLE 02 →チーム杉浦 結成



