PLAYER #05 ——
杉浦 和美
Kazumi Sugiura

HOLE 06
待つレッスン
3球でわかるのに、すぐに教えない理由とは。
葉子:長年レッスンをされてきて、いちばん大切にしていることって何ですか?
杉浦:ひと言で言えば、「気持ちのつながり」ですかね。信頼関係がないと、どんなアドバイスも話が通じないので。まずはそこにいちばんエネルギーを使います。
葉子:なるほど。スイングの前に、まずは信頼関係。
杉浦:そう。踏み込みすぎず、かといって距離を置きすぎず。心地よい距離感を保つことが大切なんですよね。
ゴルフレッスンといえば、スイングを見て、悪いところを指摘して、正しい打ち方を教える——そんなイメージがある。
ところが杉浦先生は、少し違う。
杉浦:今の私なら、3球打ってもらえれば、その人の癖はだいたいわかります。
葉子:えっ、たった3球で?切なすぎる……
杉浦:そう(笑)。昔は全然見抜けなかったんですよ。資格を取る実技テストでも必死でした。でも経験を重ねるうちに、症例がどんどん溜まってきて。球筋や動きを見れば、ダフリの原因もスライスも、力みもパッとわかるようになりました。
数多くのスイングを見てきたからこその眼力。
しかも、本人が思っている原因と、本当の原因がずれているケースは驚くほど多いという。
杉浦:だから動画を撮って見せるんです。口で言うだけだと『俺はそんな打ち方してない』ってなっちゃうから。
葉子:自分では理想のスイングをしているつもりなんですよね。
杉浦:そうそう。
……身に覚えがありすぎる。
自分ではきれいなフォームで振っているつもりなのに、
動画を見ると「えっ、誰この人……?」
理想のイメージと現実の動きのギャップは、想像以上に大きい。
正解がわかっていても、言わない。
葉子:でも先生、3球で原因がわかるなら、すぐに指摘して直してあげればいいんじゃないですか?
杉浦:それがそう簡単ではないんです。生徒さんの『心の開き具合』って直に伝わってくるんですよね。
葉子:心の開き具合、ですか?
杉浦:まだ構えがある人にズバッと正解を言ってしまうと、貝みたいにパタッと心を閉ざしてしまう。だから、まずはご本人に話してもらうんです。ご本人が『そうか、ここを直せばいいんだ』と自発的に気づかない限り、本当の意味では直りませんから。
葉子:なるほど……指導者側にもかなりの根気がいりますね。
杉浦:本当に。頭の中では『ここを直せば絶対良くなるのに!』っていっぱい話しかけていますよ。
答えがわかっていても、すぐには言わない。受け止める準備ができるまで待ち、本人の気づきを促す。この指導スタイルには、先生自身が長いスランプの中で味わった経験も重なっている。
杉浦:自分が悩んだからこそ、できない人がどこでつまずくかが実感としてわかるようになりましたね。
先生の話に耳を傾けながら、ふと、レッスンを受け始めた頃の自分を思い出した。当時、グリップの握り方を教わったものの、その重要性がよくわからず、かなりいい加減だった。
ところが今になって、グリップがどれほど大事なのかが身に染みてわかる。「ああ、あのとき先生が言っていたのは、こういうことだったのか」と、ようやく合点がいく。
きっと当時、どんなに口酸っぱく言われても、私には響かなかっただろう。
教わる側にも、言葉が入ってくるタイミングがある。
今なら、それがよくわかる。

さて、先生のレッスンについてたっぷり伺ったところで、そろそろ本題に戻らねば。
57歳、ゴルフ歴15年。10年以上「80の壁」に阻まれ続けている私。
先生、そろそろ検体・葉子のカルテも診ていただけますか?
(つづく)


