PLAYER #05 ——
杉浦 和美
Kazumi Sugiura

HOLE 03
夫からの起爆剤
「赤から打ったら?」やる気スイッチが入った夜。
杉浦先生のゴルフをいちばん近くで見つめてきたのが、ご主人だ。自身もシングルプレイヤーで、長年ゴルフをともにしてきた、いわばゴルフ人生の伴走者。
ちょっぴり辛口だけれど、ゴルフの話となればとことん付き合う。そんなご主人とのやり取りを、先生は楽しそうに話してくれた。
杉浦:主人とゴルフに行くと、私があまりにひどいから何も言わなくなっちゃって。私が「もう無理かも」って弱音を吐いたら、「自分がそう思うならやめればいいじゃん。自分次第だよ」って。
葉子:うわぁ、厳しい(笑)。
杉浦:でも、それを聞いて「くそっ、絶対やってやる!」って火がついたんですよ。
慰めてほしいときに、甘やかしてはくれない。
けれど、長年ともに歩んできたからこそ、先生の負けず嫌いな性格を誰よりもわかっているのだろう。
そんなある日のラウンド帰り。
杉浦:車の中で、「今日のゴルフ、どうだった?」って聞いたんです。
葉子:ご主人、何て?
杉浦:「どうもこうもなくない? ゴルフになってないよ。自分で探すしかないんじゃない?」って。で、最後の最後に「赤から打ったら?」って言われたんです。ものすごいショックで、悔しくて……。
長年ゴルフを楽しんできた妻への、手荒くも真剣なエール。この一言で、先生の負けん気に完全に火がついた。
杉浦:あれは去年の冬ですね。「絶対に上手くなってやる!」って心に決めました。
ちなみに、ご主人のゴルフ熱もなかなかのもので、こんなエピソードが。
ある夜、先生が2階へ上がると、真っ暗な部屋から「シュッ、シュッ」と音がする。
そっと覗くと、ご主人が暗闇でひとり素振りに没頭していた。

杉浦:「何やってるの?」って声をかけたら、「話しかけるな、集中してる」って(笑)。
葉子:暗闇で素振り⁉︎ 余計なものが見えないぶん集中できるかも……。ご主人の気持ち、私、ちょっと分かります(笑)。
杉浦:うまくいかないと、主人も自分でとことん突き詰めるタイプなんです。
暗闇で黙々とクラブを振るご主人。
話しかけられても、集中を切らさないストイックさ。
いやはや、ご夫婦そろってゴルフへの偏愛がすごい。
かくいう私も、偏愛っぷりなら負けてないつもりなんだけど、どういうわけか、スコアだけがついてこない(涙)。
やがて杉浦先生のゴルフに変化が現れ始めると、ご主人からの言葉も少しずつ変わり始めた。
杉浦:最近は「アプローチ、まあいいんじゃない」とか「パターが上手いな」って言われるようになったんですよ。
葉子:おおっ! 褒めてくれるようになったんですね。
杉浦:素直にうれしいですよね(笑)。
めったに人を褒めない辛口な夫からの「まあいい」。その一言には、ずっしり重みがある。
自分で探すしかない——
その言葉通り、杉浦先生は人に教わり、体を鍛え、動画を撮り続けながら、自分のゴルフをゼロから探した。
そして「赤から打ったら?」の屈辱から、数ヶ月。
先生のゴルフに、ついに大きな変化が訪れる。
(つづく)



