PLAYER #05 ——
杉浦 和美
Kazumi Sugiura

HOLE 02
チーム杉浦 結成
プロ、フィッター、トレーナーによる総力戦の幕開け。
葉子:そこからどうやってスランプを脱出したんですか?
杉浦:まずは、ラウンド数を増やそうと、東京にいる同期のティーチングプロに連絡したんです。そこから月に1回一緒にラウンドするようになって、仲間が仲間を呼んで、最終的に4人のグループになりました。
葉子:プロ同士の練習会ですね。
杉浦:そうなんです。でも、当時の私は本当にひどくて。チョロ、チョロの連続でした(笑)。

それでも仲間とのラウンドを重ねながら、必死に復活の糸口を探していた杉浦先生。次に向かったのは、横浜にあるフジクラのフィッティング施設だった。
杉浦:最初は道具のせいだと思って、クラブを変えようとしたんです。でも、試打した瞬間にフィッターさんから「スイングが極端なアウトサイドインになっていますよ。これじゃチョロが出てもおかしくないです」って言われて。
葉子:原因はギアではなく、自分のスイングだったと。
杉浦:そう。そこで、主人の知り合いの若手プロ経験者にもスイングを診てもらうことにしました。最初は正解を提示されるのが怖くて、正直、乗り気じゃなかったんですけど(笑)。
葉子:プライドもありますよね。
杉浦:私も教えている立場ですから。「こういう意識で振っている」って言い訳しようとしたら、「いや、実際の動きは違います。動画を送ってください」とズバッと指摘されて。
プロが、年下のプロに指示を仰ぐ。
プライドを横に置き、客観的な視点を受け入れる作業は、容易ではなかったはず。それでも先生は毎ショット動画を撮り、アドバイスを求めた。
時を同じくして、ジムでの肉体改造にも着手。ところが、トレーニングを始めると今度はスイング中に足がつるトラブルに見舞われる。
杉浦:トレーナーさんに相談したら、「身体の使い方が間違っている」と言われてしまって。
葉子:使い方の間違い、ですか?
杉浦:若い頃は多少間違った体の動かし方をしていても、筋力でカバーして振れていたんです。でも、年齢を重ねると誤魔化しが利かない。そこからゴルフに特化した体作りをメニューに入れてもらいました。
股関節の引き込み、骨盤の旋回、胸郭の捻転。これまで長年の感覚で処理していた動きを、解剖学的に整理し直していく。
杉浦:昔は「腰を力任せに回して、足裏で受け止める」という意識でした。でも「腰自体は回る構造になっていない。股関節を引くことで骨盤が回るんだ」って教わって、目からウロコでしたね。
葉子:感覚ではなく、構造から理解し直したんですね。
杉浦:最初は感覚が追いつかなかったんですが、繰り返すうちに「これが股関節を使うということか!」とつながっていったんです。
さらに、可動域の狭まっていた肩甲骨と胸郭をほぐすため、トレーナー直伝のストレッチ3種類を導入。毎日30分、2年間1日も欠かさず続けた。
杉浦:「今日は疲れたから休もうかな」と思う夜もあります。でも、「今日やめたら、またあの打てない日に逆戻りする」と自分を奮い立たせていました。
深夜12時を過ぎていても、自分に鞭打ってマットに向かうプロの執念。
一方その頃、私はといえば——
メイクも落とさずソファに沈没し、YouTubeをぼんやり眺めながらそのまま寝落ち。同じ24時間を生きている生物とは思えない、この落差よ。

フィジカルの改革と並行して、スイングの悪癖とも徹底的に向き合った。
杉浦:トレーニングの貢献度が3割だとすれば、残りの7割は自分のスイング動画との睨めっこです。ずっと気持ち悪さを抱えていたトップの形を、意を決して改造しました。
葉子:長年染みついた癖を直すのは、かなりの勇気が要りますよね。
杉浦:トップでクラブが収まらずに落ちてきてしまうのが原因で、切り返しが早くなっていたんです。そこでキャメロン・ヤングのスイングを徹底的に参考にしました。あのトップでのしっかりとした「タメ」に理想を見たんです。

杉浦:当時はトップで一時停止してから打つような練習も繰り返しました。自分では極端に止めているつもりでも、動画で見るとようやく普通のトップに見えるレベルで。
葉子:脳内の主観イメージと、実際の客観的な動きには大きなギャップがあるんですね。
杉浦:そうなんです。客観的なフィードバックと動画撮影による検証を繰り返したからこそ、そのズレを修正できました。
現在、先生の頭の中には明確なスイングメカニズムが構築されている。
杉浦:「トップは直角のL字で止める」。そこから素振りと同じ感覚で振ることで、再現性の高いインパクトが生まれるようになりました。
感覚だけで振れていた若き日とは違う。身体の構造を理解し、自分の動きを精密にコントロールする。
自分の身体がどう動いているのか。
何ができていて、何ができていないのか。
一つひとつのピースを確かめるように、新生・杉浦スイングが組み上げられていった。
葉子:フィッターにトレーナー、若手プロにゴルフ仲間……まさに「チーム杉浦」の総力戦ですね。
杉浦:本当にそうですね(笑)。でも、自分から助けを求めなければ何も変わりませんでした。素直に教えを請う姿勢が大事だと痛感しています。
教える側から、もう一度、教わる側へ。
自分ひとりで抱え込まず、一人のプレーヤーとして周囲の力を借りたことが、停滞していた時計の針を再び動かし始めた。
そして、この復活劇の裏にはもう一人、彼女の情熱に火をつけ続けた重要人物の存在が……。
そう——もっとも身近な理解者であり、最強のライバルでもある、ご主人だ。
(つづく)
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夫からの起爆剤


